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<歯の電子カルテ>標準化 災害時、身元確認狙い

毎日新聞 5月17日(金)2時30分配信

 大規模災害時の遺体の身元確認に有効活用するため、厚生労働省は今年度、現在は形式が統一 されていない歯科医の電子カルテを標準化する実証事業に乗り出す。東日本大震災では多数のカルテが津波で流失したうえ、残っていても形式がまちまちだった ため遺体との照合は困難を極めた。専門家は、将来的に標準化したカルテをデータベース化すれば、災害時以外にも活用できると見込んでいる。

 遺体が損傷しても歯は残る可能性が高い。警察庁によると、大震災による死者の身元確認で歯の情報が決め手になったのは1240人で、DNA鑑定の163人を大きく上回った(今年4月10日現在)。

  だが、行方不明となった人の歯の治療記録と、身元が分からない遺体の歯の情報との照合は容易でなかった。宮城県警は震災の約2カ月後から東北大の協力を得 て二つの情報を照合するソフトを導入。歯科医のコンピューターの記憶装置に保存されていた行方不明者の電子カルテや、紙のカルテの収集に努めたが、歯科医 ごとに形式や内容はさまざまで、統一的な形式に入力し直す必要があった。

 南海トラフ巨大地震では、国は最悪のケースの死者を約32万人と想定している。現状のままでは照合に必要な作業が膨大となり、身元確認が一層困難になることが予想される。

 こうしたことから、厚労省は6月にも検討会を設置し、身元確認のためにどのように情報を統一化すべきか協議する。今年度中に一部の歯科医で電子カルテを実験的に標準化する方針。今年度予算に事業費2100万円を計上した。

 震災前から標準化の必要性を主張してきた柳川忠広・日本歯科医師会常務理事は「南海トラフ巨大地震では歯科情報の迅速な収集システムがないと身元確認は難しい。実証事業はデータベース化を含む将来的なシステム構築のきっかけになる」と評価する。

 一方、個人情報保護に詳しい堀部政男・一橋大名誉教授(情報法)は「身元確認の目的を明示し、情報提供について広く本人同意を得ることが必要」と指摘する。厚労省は、データベース化の可否については現時点で検討対象としていない。【宇多川はるか】

 ◇解説 災害以外で活用も

 厚生労働省が歯科医の電子カルテ標準化に向けて近く実験に乗り出す。大規模災害時に活用したい考えだが、将来的にデータベース化が進んだ場合、災害時以外の身元不明遺体の捜査にも役立つとみられる。

 警察庁は「相応の捜査を尽くしても判明しない」として警察により「身元不明死体票」が作成され、その後も特定されていない遺体を「身元不明遺体」と定義している。その数は記録が残る1995年以降、計1万9673人(2012年末時点)に上っている。

 東日本大震災の犠牲者で身元が分からない131遺体(今年3月時点)については、身元確認のための捜査が続いているためほとんど含まれていない。

 身元不明死体票が作成された後に身元が判明したケースは95年の753人から年々落ち込み、99年以降は100~200人台にとどまっている。身元確認の決め手となる生前の資料は限られているのが現状だ。

 仮に歯科医の電子カルテのデータベース化が進めば、こうした遺体の身元がスムーズに確認できる可能性がある。ただし、実現には個人情報保護などの観点から課題も多く、効果と弊害を踏まえた議論が求められる。【宇多川はるか】

虫歯治療で抜いた神経再生、世界初の臨床研究へ

虫歯の治療で抜いた歯の神経(歯髄)を、親知らずから取り出した細胞を移植して再生する世界初の臨床研究を国立長寿医療研究センター(愛知県)の中島美砂子部長らが今月内にも始める。

 細菌による虫歯再発や化膿かのうを防ぎ、歯の寿命を長くできると期待される。

 症状の重い虫歯の治療では、歯の中央部分に位置する歯髄をくりぬき、空間を金属などで補強する。周囲はセメントで固めるが、すき間から細菌が入り、虫歯が再発したり、歯の根もとが化膿したりすることも多い。抜歯に至る場合もある。

  臨床研究では、患者5人の、親知らずなど不要な歯から、歯髄の再生を促す細胞を採って培養。培養した細胞を、とどまらせる役割のたんぱく質とともに、歯髄 の抜けた空間に注入する。犬の実験では2か月後に歯髄が回復。臨床研究では、同様の効果があるか、安全性と有効性を確認する。

(2013年4月20日10時15分 読売新聞)

「ドライマウス」を防いで、お口のアンチエイジング

小児科医の本木です。

健康な子どもを育む小児科医としては、家族が健康・健全であってほしいと願います。重要なのは「予防・早期発見・早 期治療」です。これを実践するには、どうしたらよいでしょうか?加齢現象の【最新の知識】を得ることです。第8回目は、口のアンチエイジングについて学び ましょう。

まず、始めに基本の確認です。生活習慣病はなぜ怖いのでしょうか?生活習慣病は無症状です。しかし、10~20年ほっておくと 心筋梗塞・脳卒中・糖尿病・認知症といった命にかかわる病気を引き起こします。【症状がない】ことが、怖いのです。最近、生活習慣病が【老い】と直結して いることが分かってきています。そのため、老いないこと(アンチエイジング)が生活習慣病を予防することにつながります。

さて、人はどこで老いを感じると思いますか?ほとんどの人に共通しているのは【目】と【口】と言われています。そこで、今日は口の生活習慣病に関する話題です。

・口が老化すると、どうなるのでしょうか?

老 化が進むと、口が渇く(口腔乾燥症・ドライマウス)、口が臭くなる、食事の味が分からなくなる(味覚障害)、歯茎が弱って血が出やすくなる歯周病、入れ歯 になる(義歯)と変化していきます。口が老化すると困るのは、味わう、飲む、話すといった人間らしい生きる楽しみが失われていくからです。

口 の中を潤すために唾液が出ていますが、実は唾液は単なる水分ではありません。唾液の中には、神経栄養因子(nerve growth factor:NGF)や上皮成長因子(EGF:epiderrnal growth factor)と呼ばれる成長因子、栄養を分解する生理活性物質、細菌をやっつける免疫物質などが含まれています。

NGFはアルツハイ マー型認知症の機能の改善に働く物質で、EGFは傷を治す物質であることが分かっています。そのため、老化によって唾液が出なくなると、成長因子が減るの で口内炎が治りづらくなったり、生理活性物質が減るので食事がまずくなったり、免疫物質が減るので口が臭くなったりします。

・老化で唾液が出づらくなったら、あきらめるしかないのでしょうか?

口 腔筋機能療法(MFT:Myofunctional Therapy)をすると、唾液の分泌が増えます。もともとは口腔の機能維持のための筋力を増強させるための治療法でしたが、顔貌の老化を防止する効果が あります。顔にある筋肉の約70%は口腔周囲に集中していますが、顔の筋肉のうち普段の生活で使われる筋肉の量は2~3割程度と少ないのです。年とは関係 になく、筋肉は使わなければ衰えてしまうため、若さを保ちたいのであれば【顔の筋トレ】をする必要があります。また、ネズミを用いた実験ですが、老化予防 効果のある【カロリー制限(必要な栄養素はとりつつ、カロリーのみを減らす食事)】をすると唾液量が増えます。

ドライマウスの人の9割が、生活習慣病である糖尿病、高脂血症、動脈硬化、精神的ストレス、食習慣の乱れや筋力の低下などの老化現象を伴っています。一方、治療法からみてもアンチエイジングをすることがドライマウスを予防する上では重要だということが分かります。

●ドライマウスのチェック項目

□ 口の中が渇いたり、ネバつく
□ 乾燥した食品がのみ込みづらい
□ 会話がしづらい
□ 食事のとき、いつも水が必要
□ 虫歯や歯周病になりやすい
□ 口臭が気になる
□ 食事の味が分かりにくい
□ 口紅がよく歯につくなど

ドライマウスで悩む患者さんは現在800万人います。予備軍を含めると3000万人にものぼると言われています。あなたも、乾燥に悩まされているようであれば、一度生活を見直してみてはいかがでしょうか?ひょっとしたら、老化の始まりかもしれません。

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